高額療養費制度とは|医療費の自己負担の上限と2026年8月からの見直し

高額療養費制度とは|医療費の自己負担の上限と2026年8月からの見直し

この記事は、全国健康保険協会(協会けんぽ)・厚生労働省の公式情報をもとに編集部がまとめた一般的な説明です。広告は含みません。情報は2026年10月30日に確認したものです。

先に結論:高額療養費制度で押さえたい3つ
  • 1か月の医療費の自己負担には上限がある同じ月(1日〜末日)の自己負担が上限をこえると、こえた分が戻ってきます。上限は年齢と所得で決まります。
  • 令和8年8月診療分から上限が見直された70歳未満では月の上限が少し上がり、新しく「年間上限」ができました。
  • マイナ保険証などで窓口の支払いを上限までにできるあとから戻るのを待たずに、窓口で上限額までの支払いにできます。

入院や手術で医療費が高くなっても、日本の公的医療保険には高額療養費制度があり、1か月の自己負担には上限があります。この記事では、会社員が入る協会けんぽの案内をもとに、70歳未満の人の上限額と使い方をまとめます。

高額療養費制度とは

高額療養費制度は、同じ月(1日から末日まで)に医療機関や薬局の窓口で支払った自己負担が上限額をこえたとき、こえた分が支給される制度です。

  • 上限額は、年齢(70歳未満か70歳以上か)と所得で決まります
  • 対象は保険診療の自己負担です。入院中の食事代の一部、差額ベッド代、先進医療の技術料などは対象外です
  • 月をまたぐと別々に計算されます。たとえば1月20日〜2月10日の入院は、1月分と2月分に分かれます

70歳未満の自己負担の上限(令和8年8月診療分から)

協会けんぽの場合、70歳未満の人の上限は次のとおりです。区分は「標準報酬月額」(給与などをもとに決まる区分)で決まります。標準報酬月額については給与明細の見方で説明しています。

区分標準報酬月額1か月の上限額多数回該当年間上限
ア83万円以上270,300円+(総医療費-901,000円)×1%140,100円168万円
イ53万〜79万円179,100円+(総医療費-597,000円)×1%93,000円111万円
ウ28万〜50万円85,800円+(総医療費-286,000円)×1%44,400円53万円
エ26万円以下61,500円44,400円53万円標準報酬月額15万円以下と確認できた人は41万円
オ住民税非課税の人など36,900円24,600円29万円

※出典:協会けんぽ「高額療養費・70歳以上の外来療養にかかる年間の高額療養費」(2026年10月30日確認)。「総医療費」は、保険診療の医療費の全体(10割分)です。年間上限は令和8年8月〜令和9年7月が最初の対象期間です。

令和8年7月診療分までの上限(参考)

区分1か月の上限額
ア252,600円+(総医療費-842,000円)×1%
イ167,400円+(総医療費-558,000円)×1%
ウ80,100円+(総医療費-267,000円)×1%
エ57,600円
オ35,400円
今後の見直し

協会けんぽの案内では、令和9年8月以降に所得区分の細分化や、標準報酬月額15万円以下の人の多数回該当の金額の引き下げが予定されています。具体的な金額は、確認日時点で協会けんぽのページに載っていませんでした。

計算の例:医療費が100万円かかった月

区分ウ(標準報酬月額28万〜50万円)の人が、1か月に100万円(10割)の保険診療を受け、窓口で3割の30万円を支払った場合です。

項目令和8年7月診療分まで令和8年8月診療分から
窓口で払った自己負担(3割)300,000円300,000円
上限額80,100円+(100万円-267,000円)×1%=87,430円85,800円+(100万円-286,000円)×1%=92,940円
戻ってくる金額212,570円207,060円

30万円を払っても、実際の負担は9万円台になります。医療費への備えを考えるときは、まずこの上限を知っておくことが大切です。

負担をさらに軽くするしくみ

多数回該当

直近12か月の間に、高額療養費の支給が3回以上あった場合、4回目からは上限額がさらに下がります(上の表の「多数回該当」の金額)。

世帯合算

同じ健康保険に入っている家族(被保険者と被扶養者)の自己負担を合算できます。70歳未満の人は、1つの医療機関ごと(医科の入院・外来、歯科の入院・外来の区分ごと)に、自己負担が21,000円以上のものだけを合算できます。

年間上限(令和8年8月から新設)

1年(8月〜翌年7月)の自己負担の合計が年間上限をこえた場合、こえた分が支給されます。協会けんぽの案内では、年間上限の申請は令和9年8月から始まる予定です。

窓口での支払いを上限までにする方法

高額療養費は、ふつうは窓口でいったん3割などを支払い、あとから払い戻しを受けます。事前に次の方法をとれば、窓口での支払いを最初から上限額までにできます。

  • マイナ保険証を使う:医療機関や薬局で、上限額の情報を確認してもらうことに同意すると、限度額適用認定証がなくても上限額までの支払いになります
  • 限度額適用認定証を使う:マイナ保険証を使わない場合は、事前に協会けんぽへ申請して交付を受け、窓口で提示します

入院や高額な治療が決まったら、早めに準備しておくと、一時的に大きなお金を用意しなくてすみます。

対象にならない費用も考えておく

高額療養費の上限は、あくまで保険診療の自己負担についてのものです。次のような費用は対象外なので、上限とは別にかかります。

  • 入院中の食事代(標準負担額)や、生活療養の費用
  • 差額ベッド代(自分で希望した個室などの料金)
  • 先進医療の技術料や、保険が使えない自由診療の費用
  • 入院中の日用品、家族の交通費など

また、病気やけがで働けない間は、収入が減ることもあります。会社員の場合は、健康保険の傷病手当金がある一方で、自営業の人などが入る国民健康保険には、ふつう傷病手当金がありません。自分の入っている保険で何が受けられるかを、一度確認しておくと安心です。

払い戻しの申請のしかた

  1. 上限をこえたか確かめる同じ月の自己負担を、医療機関ごと・家族ごとに整理します。
  2. 申請書を出す協会けんぽの場合、「高額療養費支給申請書」を協会けんぽの支部に提出します。会社の健康保険組合では、自動で支給されることもあります。
  3. 期限に注意する高額療養費を受ける権利は、診療を受けた月の翌月1日から2年で時効になります。
税金との関係

高額療養費で戻ったお金は、医療費控除を計算するときに「補てんされる金額」として差し引きます。くわしくは医療費控除とはをご覧ください。

よくある質問

入院中の食事代は対象になりますか?
入院時の食事代の自己負担(標準負担額)は、高額療養費の対象外です。差額ベッド代なども対象になりません。
民間の医療保険は必要ですか?
高額療養費で保険診療の負担には上限がありますが、対象外の費用や、働けない間の収入減もあります。どこまで備えるかは、貯金の額や家族の状況で変わります。保険の見直しは保険・お金の無料相談サービス比較でもまとめています。
自営業で国民健康保険に入っています。使えますか?
使えます。国民健康保険の場合、所得区分は前の年の所得などをもとに決まり、申請先はお住まいの市区町村です。区分の決め方や申請の方法は、市区町村の国民健康保険の窓口に確認してください。
健康保険組合に入っている場合も同じですか?
法律で決まった上限額は同じですが、健康保険組合によっては、さらに負担を軽くする「付加給付」がある場合があります。加入している組合に確認してください。

まとめ

  • 同じ月の保険診療の自己負担には、年齢と所得で決まる上限がある
  • 令和8年8月診療分から、70歳未満の月の上限が見直され、年間上限ができた
  • 多数回該当や世帯合算で、負担はさらに軽くなる
  • マイナ保険証や限度額適用認定証で、窓口の支払いを上限までにできる
  • 払い戻しの申請は、診療月の翌月1日から2年以内

医療費のための備えは、まず生活費の数か月分を貯めておくのが基本です。目安は生活防衛資金はいくら必要?でまとめています。

出典・参考にした情報

  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「高額療養費・70歳以上の外来療養にかかる年間の高額療養費」
  • 全国健康保険協会(協会けんぽ)「限度額適用認定証」
  • 厚生労働省「高額療養費制度を利用される皆さまへ」
  • いずれも2026年10月30日確認

【ご注意】一般的な説明で、個別の相談ではありません。上限額は加入している健康保険や年齢、所得によって異なり、制度は今後も見直される予定です。ご自身の上限額や手続きについては、加入している保険者(協会けんぽ・健康保険組合・市区町村の国民健康保険など)に確認してください。